東京家庭裁判所 昭和40年(少イ)16号 判決 1965年8月16日
被告人 栄印刷株式会社
代表者代表取締役木村磐根 飯島季雄
主文
被告栄印刷株式会社を罰金四万円に、被告人飯島季雄を罰金二万円にそれぞれ処する。
被告人飯島季雄において右罰金を完納することができないときは、金千円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社は、東京都大田区東六郷一丁目二六番地に工場を設けて印刷業を営むもの、被告人飯島は、同工場長としてその運営を統轄し、同工場に勤務する労働者に関する事項について被告会社のために行為するものであるが、被告人飯島は被告会社の事業に関し別紙年少者時間外労働一覧表記載のとおり昭和三九年一一月二三日から同年一二月二六日までの五週間、前記工場において、満一五歳以上で満一八歳に満たない労働者条○好他二名に対し、一週間の労働時間が四八時間を超えず、且つ一週間のうち一日の労働時間を四時間以内に短縮する場合でないのに、一日につき所定の労働時間より三〇分ないし四時間三〇分を超える時間外労働をさせたものである。
(証拠)<省略>
(法令の適用)
法律に照らすに、被告人飯島の判示所為は労働基準法第六〇条第三項、第一一九条第一号に該当し、被告会社の判示所為は更に同法第一二一条第一項に該当する。しかして労働基準法第六〇条第三項違反の罪は、同条の規定する構成要件からみて所定の年少者各個人別に、かつ使用各週毎に一罪が成立するものと解される。もつとも一日一〇時間を超える労働をさせた場合は、直ちに同条違反の罪が成立すると解し得る余地もあるかにみえるけれども、そうするとかかる場合、同一週内に一日八時間を超え一〇時間以内の労働をさせた日が幾日かあれば、前者は直ちに犯罪が成立するに反し、後者は当該週の終了を俟つて始めて犯罪の成否が判明すると共に一週毎に一罪となるなどの混乱を生ずるから、一日一〇時間を超える労働であると否とを問わず、各週毎に一罪が成立すると解するのが相当である。よつて所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四八条第二項に従い各罪について定められた罰金の合算額の範囲内において被告会社を罰金四万円に被告人飯島を罰金二万円に処し、同被告人においてこの罰金を完納することができないときは、刑法第一八条に従い金千円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし主文のとおり判決する。
(裁判官 篠清)
年少者時間外労働一覧表<省略>